ヒギンズ家炎上の書き出し

鉄錆にまみれた観覧車を見上げながら
私は決意する。


両親を殺した悪党を追い詰めてやろうと。


それは私の復讐。
それは私のエゴ。
それは私のひとかけらの愛情。


そりゃあ、子供のうちから、客を取らされていて、
蹴られた痣は消えないし、
煙草の痕も一つや二つではないけれど、
それでも自分がいつか殺してやろうと思っていた両親が
いつのまにかおっ死んでたら、それはまあ驚くってね。


それは3日前の話。
結構あっという間の話。
私がモーテルから帰るまでの30分間のあいだの出来事。


父親は口にコックが入っていたし、
母親はなんというか肉人形だった。
まぁ、本当の母親だったのかも怪しいのだけれど、
自分の行く末を見るようで吐き気がした。


私は軽い嘔吐をもよおし、その場に吐いた。
肥満しきったデブ野郎が無理矢理食べることを強要した
ピッツアとか、コークとか、喉に絡む白濁したアレとかも
まとめて吐いた。


そうして、そうして。
面倒なので、家ごと燃やした。
ヒギンズ家炎上。
それは街の中では大きめなニュース。
私の中ではちっぽけなニュース。
取るに足らない三面記事。


それは3日前の話。