言い出せないことは何よりもつらい。

※またもやX指定のつもりです。未成年者の方は読み飛ばして下さい。


「・・・あのさ、私、重くないかな・・・。」
さっきまで喘ぎ声をあげていた口が、5分ぶりに人の言語を発した。
これが密林で、彼女が猿に育てられていたのなら驚愕すべきところだ。だって日本語だしさ。
・・・でも残念ながら、ここはただのシーツが乱れた僕のベッドで、彼女も普通の女の子だ。
・・・確かに、猿らしい原始的な行ないを繰り返している僕らであることは認めておくけど。


「いや・・・ちっとも重くないけどッ?」
僕は繋がったままで萎みつつある自分の分身を彼女の中で動かしてみた。
彼女は、海綿体の力の入れ具合なんてきっと知らないだろうななんて思いながら。


「んぅ・・・。なんか、動いた。」
そりゃあ動くだろう、生ものなんだから。なんて軽口が叩ければ、
第3ラウンドへの延長戦も可能だけど、すっかりプレーオフ気分な僕は、
「息子も重くないって言ってる。」
なんて事を言ってみた。


「息子さんは、嘘つき、じゃ、ないの?」
僕が動かし続けるものだから、彼女も身を捩りながら喋っている。
まぁ既に先ほどの魅力を失った息子からすると、「さぁね。」と適当に応えそうだ。


「僕に似てるから、正直だよ。」


彼女はう、そ、と口を動かすと、腰を浮かせて僕を抜き去った。
ちゅぽんっ、ともぐちゅっ、とも言い難い微妙な音がして、僕らはまた二つになった。
粘ついた精液とか愛液とがまざった独特の匂いがしてくる。
最中は興奮するのだけれど、今の僕はクールダウンの真っ最中で、正直彼女の相手で精一杯だったから、
匂いが鬱陶しかった。頼むから、もう一回とか言わないでくれよ・・・、なんて愚痴るぐらいに。


彼女は親猫に擦り寄る仔猫のように僕の左腕を枕にして、隣に納まった。


「そろそろ、出来ないかな・・・。」
何が、とは言わない。彼女は子供を欲しがっているのだ。
結婚してから、5年。彼女の周期に合わせて僕らは励んでいた。
きっちりとは言わないけど、だいたい28日周期だった。
黄体ホルモンが〜、とか言われても僕には何のことかサッパリ解らないけれど、
妊娠し易いことくらいは知っている。


彼女のリクエストで、水着とか浴衣とか、居間とか、時には制服を引っ張り出して、
とかあらゆる手段で、生存本能への問いかけを繰り返している僕らだが、
相変わらずそれは上手くいっていない。


でも、実はそれには理由があった。
僕は彼女を世界一愛しているし、これ以上の伴侶は無いと思っている。
現に浮気もしないし、家のために仕事も削っているくらいだ。
だから、余計に言えないことがある。


彼女と知り合う前に、義妹と恋人関係にあって、
その時にパイプカット手術を受けていることだ。
いつか言わなければと思ってはいるが、彼女を失いたくないあまり言えずにいる。
僕はどうしたらいいんだろう。