姫登場。

なんというか、まったく続きものじゃなくて済みません。
仕事の休み時間にSS書いてる自分も自分ですが・・・。

  • -



「あんた、今日から私のゲボクだかんね!」


なんか、新鮮だなぁ。
唐突に我が家にやってきた子にいきなり下僕呼ばわりされる
日曜日ってなんなんだろうね。
とはいいつつも自分がにやけてしまうのは、
この、いきなりの訪問客にある女性の面影を見ていたからだった。


そして次に、半開きだったドアが大きく開く。


「あら、口の減らないおチビちゃんでごめんねぇ。」
予想通り、女の子の後ろから顔を覗かせたのは
イトコの冬美姉さんだった。
「冬ネェ、いつこっちへ?」
懐かしさも手伝ってそんな呼び方をしてしまう僕。


「丁度さっき着いたばかりなんよ。」
腰の高さで猛抗議を開始した女の子の頭を撫でながら、
そう言ってくる冬美姉さん。


「じゃ、まっすぐ?」
「そう、まっすぐ。」
そうか、まっすぐ会いに来たんだ。
事実を改めて心の中で反芻すると、
すごく嬉しいとも恥ずかしいとも言い難い、
複雑な気持ちになっていった。
嬉しかった。確かに嬉しかったんだけども。


「あれ、顔が百面相しとるよ?嬉しゅうないん?」
どうやら顔に出てしまっているらしい。
いけないいけない。


「いや、嬉しいよ!勿論。」
と言って、僕は表情を明るくしては
「とりあえず、入ってよ。ゆっくり出来るんでしょ?」
と言ってみた。
いつまでも玄関に立たせっ放しは失礼だしね。


「ううん、引越の荷物が届くし、大家さんから鍵貰ってこんと。」


・・・内心はホッとしていたのだ。
何故かと言うとこの後の起こりうる出来事が、
僕を少しだけ不安にさせていたから。


「あ、でもこの子預かってて貰える?」
・・・ホッとした気持ちは瞬時で去って言った。
そしてタイミングよく鳴る携帯電話。
冬美姉さんの好きな曲で『シュバルツバルト』だった。


「じゃあ、お願いね。」
「いい子にしてるんよ。」
と二言を言い残して、冬美姉さんは外に出て行った。
いや、元から外だったのだけれど。


「遊んでよ、ゲボク。」
そうして、部屋には僕と僕を指さす女の子だけが残ったわけだ。
さぁ、どうしようか。
起こり得る状況のうち、面倒なケースだけは避けられたが・・・。


ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
けたたましく鳴るチャイムがあった。


・・・まぁ、ハチ会わせしなかっただけマシと思うこととしよう。
といいながら、僕は玄関に向かうのだった。