朝をテーマとした書き出し

あと、何度このコール音を聞いたら、
私は受話器を置くことが出来るのだろう。
過ぎ去った時間を忘れる方法を、
私は見つけられないでいた。




気付くと朝を迎えていて、
私はひどい格好でベッドに横たわっている。
乱れに乱れきった髪とか、
目の下のくまとかを丁寧に誤魔化してから、
朝が始まる。


最近は、そんな日々が続いている。
部屋にいってきますを言って、アパートの階段を降りると、
カンカンって私のヒールが錆びた鉄の音をたてる。


路地裏を通り、電線の影を追い越し、
線路の縞々を眺めては、駅へと向かう。


朝の肌寒い空気とか、ときおり射す柔らかい日差しとか、
残飯目当てに群がっているカラスとか、
勘違いしてるのではと思うくらいに派手な格好をした
おばさんがペットの散歩をしていたりとか。


そういう色々が私のお気に入りで、
また、いつもと変わらない朝なことを示していた。


おはよう。
おはよう。


私の朝はおはようでは始まらない。
そして、おやすみなさいでも終わらない。


おはよう。
おはよう。